ショートストーリー

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小説掌編

noteで不定期に更新している140字小説です。仕様上改行が入らないのでnoteの方が見やすいかもしれません。

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余命一年。そう宣告された私は、夫の定年後ずっと家にいられる窮屈さを理由に熟年離婚を希望した。すんなり離婚に同意した夫にはこの先自由に生きてほしい。 しかし半年後、離婚した夫の訃報。離婚の時すでに余命半年だったと。まさかの事実に私と夫は似た者同士だったと自嘲し、悔恨の涙を流した。
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「見てお父さん!iPad Proでかいたよ!」 「上手に描けてるなパイナップル」 「ピカチュウだよ!」 お父さんは笑いながら仕事に行く。 「今日が仕事納めだから行ってくるよ」 「行ってらっしゃい」 本当は知ってるんだ。お父さんがサンタクロースだってこと。 「お父さんありがとう」
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「お父さん、お金がないでしょ?だからクリスマスプレゼントは色ペンのセットにするね!」 「そんなことないよ。他に欲しい物があれば言っていいよ」 「本当にほしいものはサンタさんに頼むんだ〜。iPad Proをね!」 今12万⁉︎ まずい、純粋な子供に俺がサンタだとは言えない⋯どうする⁉︎
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仲の良い同僚男性の彼女へのプレンゼント選びに付き合わされ、ネックレスを勧めた。 もっと早く出会っていればその彼女は私だったかも…と悲しくなる。 お礼に、と入ったレストランで「結婚前提に付き合ってください」と彼に渡されたプレゼント。 すっかり騙され涙目で笑い、私はそれを受け取った。
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年末の大掃除を初めて業者に頼み、キッチン周りを全てお任せした。 「う〜ん、これどう思う?」 「取れるかなあ。厳しいかも」 「そうだよねぇ」 長いこと放置していたコンロ汚れはだいぶ頑固らしい。 でもさすがプロ。ピカピカになった。 しかし誰と話していたんだろう。業者は一人なのに。
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「ママお誕生日おめでとう!」 朝起きてテーブルに子供が作ってくれた朝ごはんが用意されていた。嬉しくて感動する。 そういえばこの間「話題だったあれ一瞬で消えたよね。また食べたいな」と話したのを覚えてくれてたんだ。 たっぷり生クリームを挟んだロールパン。 簡易マリトッツォだ。
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指先だけが繋がる手と手。前に伸びる大小の影。 少し肌寒いが暖かい風は頃合いだというように私たちの間を通り過ぎた。 どちらともなく手が離れ、影は別々に歩きだす。 一歩一歩離れるたび決断を鈍らせ、私はつい振り返る。 自分の将来へ迷わず進む彼の背中はそのまま雑踏の中へと消えていった。
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向かいのマンションのベランダはずっと同じ洗濯物が干しっぱなしだ。 住人は遠目からでもわかる美人だった。でももう5日ほど見かけておらず、明かりも灯らない。 望遠鏡で確認すると部屋の床に倒れている人影。通報すると病気で倒れたらしく一命を取り留めた。 同時に今までの覗き見が露見した。
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同僚の谷くんは私の行く先々に現れる。トイレの前や給湯室にも。 内気な彼が話しかけてくれると嬉しい。もしかして私に好意が? 退勤後、エレベータ前で谷くんに声をかけられた。 もしや食事のお誘い……。 「あの、先週の飲み会費まだもらってなくて……」 「すみません、今渡します!」
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窓を叩きつけるような大雨の音。カーテンの隙間から雷が轟音と共に光った。 この雨の中、夫が帰ってきているかと心配していたら会社に泊まるとメッセージがきてホッとする。 「会社に泊まるって」 「なら朝までいいよね?」 うなずいてフフと笑う。 今夜は夫の嫌いな韓ドラを娘と一気見。
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『昨日飲みすぎて頭イタ』 『今日の昼ハワイアン行きたい人ー?』 『ノ』 『(・ω・)ノ』 『z通訳あります』 『ノ』 誰も話さない静かな空間に響く打鍵音。 頭痛薬の瓶を隣の席にそっと置けば『ありがとう』と画面に文字。 全員チャットの社内で入社2年目の俺は未だチャットに慣れない。
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「きれいな手ですね」 取引先で打ち合わせを終えた後、担当の彼が言った。 ずっと気になっていた人に褒められて嬉しくなり、体温が上がった。 「あまり苦労したことがなさそうな手だと思って」 「あ、はは……」 膨らんだ気持ちはシュンと萎み、お茶と共に流し込むと舌には苦味が残った。
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足がはみ出す小さなベッド。座ると壊れてしまいそうな小さな椅子。 何もかもが小さいこの部屋にいると私は巨大化したアリスみたい。 小さくなる薬を飲めばブルーのワンピースを着られるかもしれない。 「そろそろ時間だよ」 部屋を愛おしく眺めていると夫が呼んだ。 今日は部屋の主の一周忌。
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仕事で遅くなるため同棲中の彼に4合の炊飯を頼んだ。 帰宅すると今晩のおかずもできていた。有り難い。炊飯器を開けると蓋にびっしりついた米。 「何合炊いたの?」 「4合だよ。4のメモリにぴったり米入れたし」 一人暮らしで1合しか炊いたことがなかった彼は水位1cm上で炊けていたらしい。
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内職の納品物を引き取りに来た彼に、納品受領のサインをもらってお茶を出す。 いつも荷物を運び出した後、部屋の片付けも手伝ってくれるから。 何もかもすっきりした後、彼を見送る。 「お疲れ様でした。今日は、激しくしてすみません」 裸にシャツを羽織っただけの私に微笑み、部屋を出た。
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近所に住む彼氏がサッカーで捻挫したから湿布を分けてほしい、とうちにやってきた。 早速家に上げて湿布を貼ってあげようと足を見れば彼の左足だけ靴下がぐっしょり濡れている。その足で歩いてきた床もだ。 「何で濡れてるの?」 「足を冷やすために氷入れたから」 「靴下に直接入れちゃダメ」